10分で学ぶ経営勉強会について

 10分で学ぶ経営勉強会とは、ソフタスグループの経営陣や管理職者を中心に毎月グループ内で実施している経営勉強会の要約版です。
 本連載では、経営勉強会の内容を、約10分で読めるように要約しております。

このような方へおすすめの記事です
 ・これから経営管理者を目指す方
 ・半導体の概要や現代日本の半導体ビジネスについて要点を知りたい方

議事録

テーマ:半導体について
    「ラピダスの今後と日本経済への影響」
講師:ソフタス 山根部長

1.半導体の技術

①半導体とは

電気を通す金属などの「導体」と電気をほとんど通さないゴムなどの「絶縁体」との中間の性質を持つシリコンなどの物質や材料のこと。このような半導体を材料に用いたトランジスタや集積回路もまとめて半導体と呼ばれる。

②現在の半導体

頭脳部分(CPU、GPU、メモリー)を用途とする、2ナノメートル世代と呼ばれる先端半導体が昨今話題となっており、スマートフォン、高性能AI、軍事利用(高性能ミサイルやドローン兵器)などに利用されている。
日本国内では、TSMCが6ナノメートルの国内最先端の半導体製造を計画していることから、日本が世界に大きく遅れをとっていることが分かる。

③半導体製造における日本の強み

半導体製造の上で必要な材料や装置においては、日本はトップシェアを誇っている。

2.半導体と世界情勢

①米中対立

中国が軍事的に優位に立ちうる先端技術の獲得を阻止するため、バイデン米政権は2022年10月に先端半導体および半導体製造装置の中国への輸出を規制する規制措置を導入。2023年7月には日本、8月にはオランダが米国からの要請に応えて半導体製造装置の輸出を規制した。
一方で中国政府は半導体の原料・樹脂・電化製品関連の輸出を規制して対抗するとともに、中国が得意とするパワー半導体などの先端半導体以外の領域において、国内で大量生産できる仕組みを構築しようとする動きがある。

②世界で進む半導体への巨額投資

米国……5年で約527億ドルの資金提供
欧州……2030年までに430億ユーロの官民投資を計画
中国……計5兆円を超える大規模投資
インド……半導体工場新設へ投資額の最大50%を補助
日本……2022年度予算で1.3兆円
規制によって影響を受ける中国は、国内で半導体のサプライチェーンを築くために大規模な投資を予定している。
米国は、日本・EU・台湾と連携し、新たな半導体のサプライチェーンを築こうとしており、法改正や大規模な資金提供を行う予定である。EUも大規模な投資を予定している中で、日本は約1.3兆円と見劣りする。

3.ラピダスについて

①ラピダスとは

中国が軍事的に優位に立ちうる先端技術の獲得を阻止するため、バイデン米政権は2022年10月に先端半導体および半導体製造装置の中国への輸出を規制する規制措置を導入。2023年7月には日本、8月にはオランダが米国からの要請に応えて半導体製造装置の輸出を規制した。
一方で中国政府は半導体の原料・樹脂・電化製品関連の輸出を規制して対抗するとともに、中国が得意とするパワー半導体などの先端半導体以外の領域において、国内で大量生産できる仕組みを構築しようとする動きがある。

②ラピダスの目指す未来

ラピダスが目指すのは、先端ロジック半導体の中でもまだ大量生産に至っていない2ナノ世代の半導体の製造で、立ち位置としては、設計から製造・組み立てを一貫して行うファウンドリとなる半導体メーカーである。
設計から後工程までを請け負うことで、スピード感をもって対応できることを強みにしていく考えである。

③ラピダスの課題

日本には、半導体製造装置、材料といった今でも他国と競える分野があることから可能性がないわけではないが、ファウンドリとしてのノウハウの獲得や投資金額の少なさ、顧客はいるのか、等が課題としてあげられる。

4.議論

ラピダスは成功するか

◦そもそも、政府は一民間企業に対してどのような建てつけで 3300 億円もの金額を拠出しているのか

◦国策プロジェクトとしたいことから、国の事業の公募でラピダスが採択された

◦ラピダスは民間企業なので、三菱重工の MRJ のように撤退されてしまう可能性があるのでは(MRJ は政府から 500 億規模の支援を受けていたが、事業撤退している)

◦民間企業となると、成功するとは思えない状況にある。政府の肝入りとは思えない

◦日本が大きく後れを取っていることから大逆転するしかない状況の中、政府が目先のことだけで将来的なことが考えられていないように見える

◦他企業との連携の際、公益法人にしたくても出来ず、この法人格での成功は難しいと考える

◦コンセプトによると思う(将来の生産性や GDP 等)

◦一般企業となれば顧客志向は当然なので、ラピダスが目指す未来の達成は難しいのではないか

◦当面は、2 ナノではなく 7 ナノで成り立たせることはあり得ると思う

◦過去(30 年程前)の半導体プロジェクトで諦めてしまったところから、日本は失敗している

◦期待度は高くないが、成功するかというところであれば成功して欲しい

◦ラピダスの成功は、結果日本経済、そしてソフタスも潤う結果になる(ソフタスとの関係)

5.考察

3年前のコロナ禍で、テレワーク増加によるノートパソコンの需要、公共交通機関の利用を避けるための自家用車の需要が急増し、各メーカーにおける半導体不足による減産・操業停止は記憶に新しい。
半導体業界はグローバル市場の急激な変化に、在庫調整や削減の取組みにより対応してきた。
そんな中、世界各国が自国内での半導体生産能力増に向けて動いている。
本日の勉強会から、日本の半導体技術が大きく後れを取っていることをデータから改めて認識することとなった。
後れをとっていながらも、投資を含めた国策としての取組みが他国より劣勢であることから、政府の本気度が感じられないことは否めない。

今後、電気自動車、AI、スマートシティ、自動走行、ロボティクス等の分野で、半導体需要が高まっていくと考えられるが、ラピダスが成功するためには、

◦顧客ニーズの把握
◦生産性の向上 (効率化 )
◦継続した技術開発

が重要だと考える。
日本政府が継続した支援を行い、日本の半導体がこれらの分野に大きく参入し、日本経済が活性化されることを期待したい。