はじめに
従来のマルウェア攻撃は、悪意あるプログラムを含むファイルをターゲットに送り込む手法が一般的でした。
しかし、近年では「ファイルレス攻撃」と呼ばれる新たなサイバー攻撃手法が注目されています。ファイルレス攻撃は、一般的なウイルス対策ソフトでは検出が難しいため、高度なセキュリティ対策が求められています。
この記事では、ファイルレス攻撃の仕組みや特徴、そして有効な対策について解説します。
このような方へおすすめの記事です
・サイバー攻撃の種類や対策について知りたい方
・自社のセキュリティ対策について見直したい方
ファイルレス攻撃とは?
ファイルレス攻撃とは、従来のマルウェアのように「悪意ある実行形式ファイル」を使用せず、システム上に存在する正規のプロセスやツールを利用して攻撃を仕掛ける手法のことです。
この攻撃では、標的のコンピュータにファイルを保存せず、従来のシグネチャベースのウイルス対策ソフトでは検出が難しい特徴があります。
ファイルレス攻撃の仕組み
ファイルレス攻撃は、以下のようなプロセスを通じて実行されます。
初期侵入
攻撃者は、次のような手法でターゲットのシステムに侵入します。
フィッシングメール:不正なリンクや添付ファイルを通じて、攻撃を仕掛けます。
不正なWebサイト:悪意のある、または改ざんされたwebサイト経由でスクリプトなどを実行させます。
悪意のある広告(マルバタイジング):正規の広告ネットワークを介して、悪意のあるコードを実行させます。
正規ツールの悪用
システム上にある正規のツールやプロセスを利用して攻撃を進めます。
以下のような悪用しやすいツールを用いて、攻撃者は外部サーバーと通信したり、システムの制御を奪ったりします。
PowerShell:Windows環境で広く使われる管理ツール。
WMI(Windows Management Instrumentation):システム管理用のフレームワーク。
レジストリ:システム設定を保存するWindowsのデータベース。
持続的なコントロール
ファイルレス攻撃はシステム上に痕跡をほとんど残さないため、長期間にわたり攻撃者が潜伏し、攻撃を続ける可能性があります。
ファイルレス攻撃の対策
ファイルレス攻撃を防ぐためには、従来のセキュリティ対策に加えて、次のような対策を講じる必要があります。
標的型攻撃メール対策
フィッシングメールが多くのファイルレス攻撃の入り口となっています。不審なメールやリンクを開かないようにし、従業員に対して定期的にセキュリティ教育を実施しましょう。
PowerShellやWMIの制御
正規ツールの使用を制限し、不審なスクリプトやコマンドの実行を防ぐことで、攻撃のリスクを減らせます。
- WMIを必要最低限の操作に制限する。
- PowerShellの実行をログに記録し、不審な活動を監視する。
脆弱性管理
OSやソフトウェアを常に最新の状態に保つことで、脆弱性を悪用されるリスクを減らします。定期的なパッチ適用を徹底しましょう。
ネットワーク監視
ネットワークのトラフィックを監視し、不審な通信を早期に発見する仕組みを導入します。例えば、外部サーバーへの不審な接続が発生した場合にアラートを出すように設定します。
権限管理の強化
最小権限の原則を適用し、不要なユーザーやサービスアカウントに高い権限を与えないようにします。特に管理者権限の乱用を防ぐことが重要です。
EDR(Endpoint Detection and Response)の導入
EDRは、端末上での不審な挙動を検知するツールです。ファイルレス攻撃のようにログや痕跡が少ない攻撃でも、リアルタイムで異常を検知し、対応することが可能です。
おわりに
ファイルレス攻撃は、従来のファイルベースの攻撃に比べて検出が難しく、高度な対策が求められるサイバー攻撃です。しかし、この記事で紹介した対策やツールを導入することで、リスクを大幅に軽減することが可能です。
サイバー攻撃は進化し続けています。今後も新しい手法に対応するため、最新の情報をキャッチアップし、セキュリティ対策を強化していきましょう。